芥川竜之介を小説家としてよりもむしろ随筆家として認めている人が少なからずある。
この『侏儒の言葉』は、その最も光彩陸離たるもの。
明治以来諸才子争って泰西のアフォリズムの形式を模したが、その鋭利と辛辣とにおいて、その教養の多面と表現の自由とにおいて、これに並ぶものはないとさえいわれる。
ここに収めた三篇は、いずれも作者最晩年の代表作。
『玄鶴山房』の暗澹たる世界は、作者の見た人生というものの、最も偽りのない姿であり、『歯車』には自ら死を決意した人の、死を待つ日々の心情が端的に反映されている。
『或阿呆の一生』は、芥川という一人の人間が、自らの一生に下した総決算といってよい。
芥川が小説、随筆、童話、戯曲と、その才気にまかせて様々のジャンルで試みた作品の中から、広い意味で「子どもむき」と考えられる作品を選び収めた。
この作品群から、機智や逆説や諷刺、そしてまた、そうした理智の鎧で固められた奥にひそんでいる作者の、少年のような純潔で素直な魂を感じとることができる。
一九二七年夏の自殺にむかって急傾斜してゆく芥川。
その精神の秘密を、評論・小説・随筆・遺書と、様々な体裁をとりながら教養と機智のおもむくままに、工夫をこらして表現した作品を集めた。
「芭蕉雑記」「『今昔物語』の鑑賞」など、その後の古典研究に画期をなした作品も含まれており余りに早い死が惜しまれる。
新感覚派の驍将として登場した横光は、つぎつぎと新しい小説形式に挑戦したが、戦争によって不幸にも挫折した。
だが現在の文学状況の中で、横光の試みは今もなお課題たりうる多くのものを含んでいる。
表題二作のほか「火」「笑われた子」「蝿」「御身」「花園の思想」など初期短篇と「機械」を収める。
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